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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.113 今語るべき文具 その1

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、ブング・ジャムのみなさんに「今、気になっています」という文具を紹介してもらいました。

第1回目は高畑編集長にインドの万年筆「MAZE(メイズ)」を紹介してもらいました。
(写真左からきだてさん、高畑編集長、他故さん)*2026年8月15日撮影
*鼎談は2026年7月25日にリモートで行われました。

インド発、超ビジュアル系万年筆

――今回は、今注目すべき文具を皆さんにご紹介いただきます。まずは、高畑編集長お願いします。

【高畑】インドから送られてきた万年筆です。Endless(エンドレス)っていう、変わった万年筆をいっぱい作ってるメーカーなんですよ。今回買ったのもちょっと変わってて、届いたのがこれなんだけど、もうケースからしておかしいんだよ。

【きだて】なにこれ、卒業証書いれる筒?

【高畑】「ナウシカ」の遺跡に出てくる、謎の模様の入った筒みたいなのが送られてきてさ。ここに「MAZE(メイズ)」って書いてあるのが商品名なんだけど、明らかに3Dプリンターで作ったケースなんだよね。

【きだて】そう見えるね。

【他故】スクリューケースだ。

【高畑】開けると中から出てくるんだけどさ、これおかしくない?

万年筆1.jpg
【他故】デザインがすごいね(笑)。

【きだて】なんじゃそりゃ。

【高畑】万年筆なんだけど、アイドロッパー式なので、ここはただの容器なのね。その容器の部分が3Dプリントされてて、中にらせん状のインクタンクが入ってるんだよ。

【他故】あ、それタンクなの?

【高畑】そうそう。ここにインクが直で入るんだよ。

【きだて】チューブ的なものが入っているの?

【高畑】じゃなくて、ここの成形の時点で中に空洞を作り込んでる。

【きだて】ほぉー。

【高畑】何種類かあって、2個買ったんだけど、こっちはこんな感じ。中にこうこういう風にチューブが入ってるんだけど、こうやってやるとさ、こういう状態分かるかな?

――あ、インクが動いてますね。

【他故】ああ、本当だ。中空の部分があるんだ。

【高畑】そう、中に穴が掘ってあって、しかもねじれてたりする。このねじれた穴って、これまでならそもそも作りようがなかったわけさ。それを3Dプリントならできるよねっていう製品なのね。

【他故】うんうん。

【高畑】まあ、面白い以外には何もないんだけど。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】こっちはパイプみたいなのが4つあって、こっち側では繋がってるから、片方からインクが出てくると反対から空気が上がってくるわけさ。で、ひっくり返してコンコンってやると、ピシャーって逆向きにインクが入って、こんな感じになったりする。インクの動き方がちょっとおかしいじゃない。しかもこっちは透明で二重らせんだから、インクを入れてくとらせんに沿ってクルクルクル、ヒュヒュヒュって行くんだよ。

万年筆2.jpg【きだて】なんかあれだね、エヴァのロンギヌスの槍みたいだな。

【高畑】あー、そういうやつ。しかも赤のインク入れちゃったから余計にそんな感じで。で、中身は普通に万年筆なんですよ。スチールのニブで、そんなにすごいものじゃない。ただペン先が、日本の影響もあるんだと思うけど、一個はちょっと長刀っぽいんだよ。

【他故】あ、本当だ。

【高畑】カリグラフィーっていうペン先で、長刀っぽい形に研いであるから、独特の書き心地はある。とは言っても、スチールの比較的安価なニブですっていう感じ。これは万年筆の性能がどうこうじゃなくて、この見た目と、こういう遊び方をしたものがインドから届くっていうのがめっちゃ面白くて買ったんですよ。

【きだて】あー、そうか、デーヴァナーガリー文字みたいな感じだと長刀が結構合うのかもしれない。

【高畑】あ、インドの文字ね。

【きだて】なんか筆跡がしっくりくる。

【高畑】ペン先的には、確かにインドのカリグラフィーみたいなのに使いやすいのかもしれないね。

【きだて】サンスクリット語とかああいう梵字っぽいやつ。あれって多分、長刀みたいな感じで、太さを変えて書くじゃない。その辺にマッチしてるのかもしれないね。

【高畑】うん、それもあるかもしれない。

【きだて】面白いね。

【高畑】ペン先の部分は割と普通なのさ。でも、Endlessは元々万年筆の会社で、それこそ「キャップレス」のコピーみたいな万年筆とか、吸入メカがちょっと変なやつとか、変わったものを作るのよね。これはArclayer(アークレイヤー)っていう、多分3Dプリントを色々やってる会社とのコラボ商品なんだ。だからケースも3Dプリントで、下手すると本体より時間かかってんじゃねえのっていうケースに入ってくる。その謎のこだわりどころがちょっと面白くて。最近の万年筆って、金が値上がりしてね……みたいな渋い話が多いじゃないですか。

【他故】うんうん。

【高畑】こういうのを見てると、「もうちょっと楽しくやろうぜ」っていう気になる。これが89ドルかな。後ろを開けるとインクが降りてくるインキ止め方式だと99ドルで、10ドルぐらい違うんだけど、そっちはここにインキ止めのためのネジが入るから、その分だけこのぐるぐるが短くなっちゃうんだよね。

【他故】ああ、そうか。

【高畑】それが嫌でね。このぐるぐるが面白いから、インキ止めじゃなくて単なるアイドロッパーの方を買ったんですよ。89ドルだから、1万3,000円ぐらいかな?

【他故】1万4,000円とかそんなもんだね。

【高畑】もちろん高級な金ペンじゃ全然ないんだけど、スチールペンの中間ぐらいの値段で買えるわけだよね。正直、万年筆の性能として考えたら、こんなことしないで普通のアイドロッパーの穴の方がいいと思う。

【他故】ははは、それはそうだよね(笑)。

【高畑】こんな細いところに入れてるから、棚吊りみたいになったり、中に気泡が入って動かなくなったりするんだよね。こっちは道が4つあるからどっかから抜けてくれるんだけど、こいつは2つだから、片方が詰まると動かなくなる。色々と問題はあるし、しかも密閉もいまいちっぽくて。

万年筆3.jpg【きだて】大分漏れてるな。

【高畑】結構漏れたりするんですよ。普通にちゃんと書きたいんだったら「カクノ」でいいじゃんって話になっちゃうんですけど。

【他故】まあね。

【きだて】でもこれは、万年筆の新しいジャンルだな。

【他故】面白いね。めっちゃ面白い。

【高畑】これはアリだと思うんだよね。漏れるとか何だとかっていうのは、まだ直しようがありそうじゃない。だけど日本のファクトリーだと、3Dプリンターで全部作っちゃおうっていう考え方はあんまり出てこないんじゃない。

【他故】そうだね。

【高畑】でも「文具マーケット」を見てると、大分いたじゃん。ここ2回ぐらいだと、3Dプリンターで自分でペン軸を作りましたっていうのが多い。ただ万年筆だと、コンバーターから後ろのボディは作るけど、首軸とコンバーターは正規品みたいな安全策が多いじゃないですか。

【他故】うん、そうね。

【高畑】アイドロッパーでここをいじるっていうのは、なかなかない。やっぱり、下手な先入観がないからできるっていうかさ。

【きだて】工作精度をあんまり気にしないんだろうね。

【高畑】まあそうね。3Dで作ってるとやっぱり隙間ができちゃったりするんだろうね。

【他故】ああ、そうか。

【高畑】後加工をもっとちゃんとやればいいのかもしれないけど。でも、3Dでこれだけ透明度があって、中にちゃんと立体を作れるってすげえなっていうね。

【他故】面白いね。

【きだて】光造形だよね。

【高畑】光造形だと思う。

【きだて】こんなに透明度が出て、キレイにできるんだね。

【高畑】ちょっとすごい。ただ、インクが入ってないところを拡大して見ると、内側に積層痕が見えたりはするのよ。

【きだて】ああ、見えるね。

【高畑】これを見ると3Dでプリントしたんだなって分かるし。あと素材の問題で、インクとの相性がそんなに良くないんだよ。本来コンバーターとかは、もっとインクと馴染みやすくて、漏れない、染み込まない素材で作ってるはずなんだよね。だからこれは、多分3Dプリンターありきだよね。

【他故】そっか(苦笑)。

【高畑】あとインクを入れたまま半年置いといたら、洗っても取れないとかもありそう。

【他故】ていうか、これ洗浄どうするんだ?

【高畑】洗浄は難しい。穴が複数あるじゃん。僕がやったのは、シリンジ、注射器ね。あの先の細いノズルを片方の穴に入れて、ビューって水を入れる。そうするとシュルシュルシュルって水が回ってくんだよね。ただ、中で固まっちゃったりすると、溶かすのは難しそうだね。

【きだて】どちらにしてもいろいろと手間はかかりそうな気がするな。

【高畑】だから、「遊び終わったらちゃんと洗っておきましょう」という気がちょっとする。

【きだて】見た目が面白いからってインク入れっぱなしにできねえな、これ。

【高畑】そんな感じはちょっとする。だから、微妙は微妙なんだけど。

【他故】モノによっては、染まっちゃったりすることもありそうじゃん。

【高畑】可能性は否定できない。まだ使い始めて長くないからね。インクの種類によっては、1回でも染まっちゃうやつがあるかもしれない。(高畑編集長談:実際、赤い方はこの後すぐに洗ったけど樹脂が染まってしまい、透明には戻りませんでした)

【他故】あるかもしれないね。でも、何かすごい興味が出てきた。普通に売ってないのかな?

【高畑】これがクラファンで出てたのって、もう1年ぐらい前の話だと思うんだよ。すっかり忘れてたら先週届いたんだけど(笑)。

――そんなにすごい時間差があるんだ(笑)。

【高畑】いや、よくあるやつで。Kickstarterに出てたから面白いなと思って申し込んだんだけど、すっかり忘れて1年近く放置してたんですよ。そしたら突然、汚いダンボールが届いて(笑)。

【きだて】海外通販やってるとお馴染みの、開けるまで記憶にない汚いダンボール(笑)。

【高畑】「何じゃこりゃ」って思って開けたら、「あ、これか」みたいな。

【他故】今Kickstarterを見つけて見てるんだけどさ、「MAZE Pro」でもかっこいいよね。これコヒノールとさらにコラボしてるってこと? 「Kohinoor Noir Edition」って書いてあるけど。

【高畑】あ、本当だ。この黒いやつね。多分後からできたやつで、「こういうのも出るけど、上乗せして払ったらこれに変えてあげるよ」っていうメールが来た。

【他故】へぇ。

【高畑】これ、ダイヤみたいなのが乗ってるんだよね。ペン先のハート穴かと思いきや、何かキラキラが付いてるんだよ。

【他故】あ、これそうなんだ。

【きだて】どういうこと?

【他故】穴が開いてないんだ。

【高畑】「MAZE Pro」はいろんなパターンがあるんだよ。中の溝の掘り方が4、5種類あって、その中から選べっていう感じになってる。で、後ろ側がインキ止めになってて。

【他故】開くやつだよね。

【高畑】らせんの種類が、DNAとツイスト、それから「モーゼ」。これはモーゼの十戒かな、水が割れてるみたいに見えるから。あとコイルとパーティーとSWIRL(渦巻き)で、6種類あるのかな。軸の色も、緑透明とか赤透明とか色付きの透明があるっぽいんだけど、インクの色が見えないのは嫌だなと思って、透明にして。

【きだて】このラインアップなら透明だよな。

【他故】まあそうね。

【高畑】これは透明しかないなと思って選んだんだけど。

【きだて】このモーゼが気になるな。インク入れたらどんな感じになるんだろう。

【他故】2つに割れるのか?

【高畑】動画がくっついてるじゃん。それを流して見てたら多分どっかに出てくると思う。

【他故】あ、確かにここにあるね。

【高畑】普通に真ん中に穴を開けるだけじゃなくて、3Dプリントとか立体成形を使うとこんな遊びができるよ、という1つなんだよね。それが日本からじゃなくて、インドから出てくる。万年筆のトラディショナルな性能でいったら日本は圧倒的に高いと僕は思うんだけど、最近ちょっと真面目過ぎやしませんか?っていう気がして。きだてさんが買ってきた、中国のキャップが必要なキャップレス万年筆とかさ。

【きだて】ははは、「キャップいるっス」ね。

【高畑】あとアメリカだと、コニックニブとか言ってチタンの塊から削り出す人がいて、ペン先も「インクが出てくりゃいいんでしょ」みたいな感じになってるじゃないですか。

【他故】うんうん。

【高畑】新しい材料とか新しい加工技術ができてるんだから、こういうことをする人が出てきても当然だなとは思うんですけどね。

【他故】まあそうだね。

【きだて】当然とは言うけども、とはいえ、これを見るまで自分にそういう発想がなかったのがちょっと悔しいね。

【高畑】そうそう。ウクライナがドローンで戦い始めたとかさ。それも3Dプリントしたドローンで、日々あらゆる物作りが変わりつつある。自分も3Dプリンターを買ったんだけど、ああいうもので物を作ってると、世の中の考え方も段々変わってくるんだろうなという気がする。もちろん、これが完成形かっていったらまだまだだよねっていうのは、言えばキリがないけど。

【他故】いや、でもこれは面白いわ。

【きだて】アイドロッパーなら、確かに3Dプリンターでボディは作れるんだっていう。ニブはさすがに無理だけど。

【高畑】多分、ニブとペン芯が難しいんだよね。でもそこは、別にジンハオとかああいうとこのやつを買えばいいじゃんっていう。

【他故】まあね。

【高畑】ニブメーカーはあるから、ニブだけ買ってきてもいいしって思うと、じゃあ個人でも作れるじゃんっていう時代は来てる。

【きだて】だよね。

【高畑】それこそ「文具マーケット」みたいなところにひょいと持ってきて、「これの別バージョン作りました」って、中の空洞がもっと面白いやつを出す人がいても全然いい。それだけじゃなくて、これまでにないギミックを考える人が出てきてもおかしくない。

【他故】そうね。

【きだて】万年筆ならできるんだよな。

【高畑】まあ単純だしね。

【他故】インクが入ってるだけだからね。

【高畑】ペン芯とかの精度はすごい必要だけど、ボディ自体は比較的シンプルだもんね。

【きだて】うーん、何か悔しいな。

【高畑】こういうの悔しいよね。日本だと、それこそペンショーに行くと職人がいろいろいるじゃん。自分で木を削り出して、質の高いオリジナル万年筆を作ってる人はいっぱい出てきてる。なんだけど発想としては、いい木にいい塗装をしてキレイなものを作りましたっていう、順当な方向でのレベルの高さなのね。そこに螺鈿をやってますとかはいるんだけど、この感じの遊び方ってなかなかないなと思って。

【きだて】そうなんだよね。だから、伝統工芸としての技術を高めていくっていうルートは全然問題ないんだけど、そうじゃなくても良くなったんだよね、3Dプリンターのおかげで。

【他故】そうだね。

【きだて】これがでかい。だから、自分で思いついた面白ペンを作れる時代はもう来てたんだなっていう。

【高畑】あ、そうそう。それはそうかも。きだてさんが「俺が考えた面白ペン」を作れる可能性は、確かにあるんだよね。

【他故】そうだよね、あるある。

【きだて】だからこそ、今これに対してすごい悔しい思いがある。

【高畑】きだてさんの目線から見たらそうだよね。こうやってインクが動くのを見てると、それこそフローティングペンみたいな方向もあるかもしれないし、いろんな遊び方ができそうじゃん。しかも軸の中だけじゃなくて、外にいろんなものを付けることだってできるようになってるじゃない。

【他故】できるよね。これ進展させたらさ、2色の万年筆が作れなくね?って思うんだよね。

【高畑】ああ、可能性はあるかもね。

【他故】タンクを 2 つに分けて。もちろん、ペン芯は両端に付けざるを得ないんだけど。でも、これ2色万年筆いけるな。

【高畑】できる可能性はあるね。

【他故】真ん中を分けるっていうのが、見せ方としてできるようになるなっていう。

【きだて】両端に付けなくても、半分に割った状態で機能するニブを作れてしまえば。

【高畑】そうそう。ペン先が2つ付いてるボールペンを作ってた人いたじゃん。

【きだて】そうそう、あの感じがもっとカッコよくできる可能性もあるんだよね。

【高畑】あるある。それはめっちゃ可能性を感じるよね。

【きだて】ああー、面白くて悔しい。

【高畑】もちろんKickstarterでやるならある程度の量は作らないといけないけど、極端な話、これを作ろうと思ったら1個でいいんだよ。

【きだて】大量に売るんじゃなければね。

【高畑】設計するのは大変だけど、作るのは1個でもできるわけさ。だからきだてさんが好きなペンを作って、「10個しか作りません」みたいなのも、場合によっては全然アリなんだよね。

【他故】そうね。

【きだて】しかも、データさえ作っちゃえば、同じものなら何個でも作れるので。自分1人で楽しんでもいいし、売ってもいいしっていう選択肢が広いんだよ。

【高畑】受注してから生産でも全然いいしね。俺も自分が売ってるやつは、在庫を10個とか作っといて、足りなくなったらまた作るっていう方式だから。今はペン置きとか割と地味なものしか作ってないけど、こういうの見るとペンそのものにも手を出したくなるよね。

【他故】なるほど、分かるな。

【高畑】「俺が考えた最強のグリップ」とか、そういうのは色々とできるんだろうな。

【きだて】はぁー。

【高畑】きだてさんが今何を考えてるのか。

【きだて】いやほら、3Dプリンターもさ、今どんどん使える素材が増えてるじゃない。

【高畑】増えてるね。

【きだて】それを思うとさ、自分の考えたイロモノペンがどう作れるのかっていうのを思うだけで、ちょっとたまらんね。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】このタイプの光造形は材料がすごく限定されるけど、僕が持ってるような積層型だと、フィラメントは何種類かあるし。もちろん光造形の方が全然キレイにできるから、インク漏れとかを考えると多分そっちが良い。

【きだて】それはそうなんだけど。

【高畑】きだてさんが、ボディの方だけ作るんだったら、そうじゃなくてもいいしね。

【きだて】そうそう。

【高畑】きだてさんと僕は多分そうだと思うんだけど、夢が広がるんじゃなくて焦るっていうね。そういう気持ちありません?

【きだて】何かね、あと20年早くこの技術が出てきてれなかったかっていう。

【高畑】でも、今からでもいいんじゃないのってちょっと思う。俺は今ペン置きみたいなものを作ったりしてるけど、設計した通りの形が出てくるのはめちゃめちゃ面白い。僕は元々機械系で図面が書けるから、きだてさんが「こんなの作りたいぜ」って言ってくれたら、代わりに作ってもいいし。

【他故】ああ、いいね。

【高畑】きだてさんの作りたい「これ」を、できる範囲で俺が作るっていうのも、なしじゃない気がする。めっちゃ色々と考えちゃうところなんですよね。

【きだて】これは本当に考えさせられるし、悔しいしで、面白ろいな。

【高畑】これね、面白ボールペンで来てたら、そんなに思わなかったと思うんだよね。面白ボールペンはこれまでにもあったし、中国でいっぱい作ってたのが小ロットでも作れるんだね、ぐらいの受け止め方になる。それを万年筆でやってきたところの掟破り感がすごくあって、そこがいいよね。万年筆を神聖視しないというか、「万年筆だからなんじゃい」みたいな作り方が。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】日本のメーカーは今、金ペンが値上がってとかで、ちょっと手詰まり感を感じるのよね。ラインアップをどう維持するかというところでみんな頑張ってる感じがするんだけど、それよりはちょっと面白いことをするのがあってもいいよね。

【他故】本当に、売ってたら欲しいんだけど、まだ見る限り特に検索には引っかからないので。

【高畑】このEndlessって、ペンショーに毎年出てるんだよね。

【他故】あ、そうなんだ。

【高畑】だから、今年も11月にやるじゃない。その時に持ってくる可能性はあるんじゃないかな。

【他故】へぇ、見たい見たい。

【高畑】前々回のペンショーでノック式のキャップレスもどきを買ったんだけど、前回行ったら精度が上がってるのね。明らかにカチッと感が違う。年々ちょっとずつ上手になっていく、ワクワクするメーカーなんだよね。

【きだて】いいね。作りながら製品が良くなっていくというこのダイナミック感。

【高畑】最初は「日本だと、このクオリティじゃ通用しねえな」なんて言ってたのが、気が付いたらちょっとずつ良くなってる。しかもこういうトリッキーなことをやってきて、気が付いたら「別にそれでいいじゃん」になっちゃう。これだって今は「漏れてる」とか言ってるけど、漏れなきゃいいわけで、全然行きそう。

【他故】ああ、Instagram があるね。ちょっとフォローしとこう。情報もらえるかもしれない。

【高畑】ここしばらくで1番衝撃を受けたのは、これかな。モノとしては全然難しくないんだけど、難しくないからこそ先にやられた感がすごくある。ということで、万年筆の新時代というか、新しい遊び方でした。

――これは、首軸を外してインクをスポイトでポチョンって垂らすやり方ですよね?

【高畑】あ、そうです。首軸を外してインクを入れる、ただそれだけ。こう見ると、中に穴が4つ見えるんだよ。そのまんまな感じですね。

【きだて】本当に、洗いづらそうだな(苦笑)。

【高畑】「そんなことはね、もう分かってるんですよ」っていうぐらい洗いにくい。使いやすいとか使いにくいとかじゃなくて、面白いからやっちゃったっていう、1アイデア系だよね。

【きだて】これ思いついた時は興奮したろうな。

【他故】ははは(笑)。

――インクも作ってるんですね。

【高畑】インクも出してるけど、僕は買ってないですね。ちょっと斜めになる、コマみたいな可愛らしいボトルで、これは前からあるんですよ。このペンに合わせたんじゃなくて、元々このメーカーが持ってるインク。それはそれで可愛らしくていいんですけど。

――ペンショーに出店するんだったら、とりあえず興味のある人はペンショーに行って探してみるのがいいですね。

【高畑】絶対出てるかは分かんないけど、今年も多分出店はすると思うので、もしかしたら会えるかもしれない。

――もし、この万年筆が置いてなくても、ブースの人に聞いてみれば。

【他故】「あれはこれからどうなるんだ?」みたいな。

【高畑】それ以外のペンも結構変なんですよ。コンバーターが付いてるのに、尻軸を外さなくても外側から回せるダイヤルが露出してるタイプとかある。町の発明家みたいなノリが残ってる、その不思議な感じがいいよね。

――普通の万年筆に飽きたらどうぞって感じですね。

【高畑】そんな感じ。1本目にはお勧めしないよ。

【他故】そりゃそうだろう(苦笑)。

*次回は「タブカットシール」です

プロフィール

高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。新著は『人生が確実に幸せになる文房具100』(主婦と生活社)。
https://bungu-o.com/


きだて たく

小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
小学生のころから文房具が好きで、それが高じて文具メーカーに就職。ただし発言は勤務先とは無関係で、個人の見解・感想である。好きなジャンルは書くものと書かれるもの、立つ文房具と薄いペンケース。30分間文房具のことしか語らないトーク番組・775ライブリーFM「他故となおみのブンボーグ大作戦!」パーソナリティ。たこなお文具情報室所属。
「他故となおみのブンボーグ大作戦!」番組ホームページ https://daisakusen.net/